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至福の291物語

“福井県”と聞いて思い浮かべるものとは?日本海ならではの特産から匠の技が光る名産まで、知れば知るほど奥深いふくい魅力をご紹介いたします。

vol.4「福井の冬水ようかん」

2020.06.29

冬に食べる!?水ようかん

「水ようかん」と言えば、夏に食べる和菓子と思われる人も多いかと思います。驚くかもしれませんが、福井県では昔から“冬”に食べる風習があります。

『福井の冬水ようかん』と言われ、一般的な練ようかんと比べて糖度が低く作られています。糖度が低いため常温では日持ちせず、あまり保存が効きません。そこで、昔から室外の廊下や納屋を冷蔵庫がわりにして保存していたと言われています。
福井県の冬の気温は0〜10度程度、寒い冬にこたつで食べる冬水ようかんは、地元の人々にとっては“こたつでみかん”を食べるのと同じくらいにポピュラーなものです。では、なぜ冬に食べるようになったのでしょうか。

歴史から紐解く、冬水ようかん

『福井の冬水ようかん』は大正・昭和の丁稚奉公の時代から、庶民の間では日常的に食べられていました。昔は「丁稚(でっち)ようかん」とも言われ、京都に奉公に来ている丁稚が福井へ里帰りする際に持たせたこと、奉公先の練ようかんを改良したのがはじまりなどの諸説があります。その頃から、京都や滋賀などの近畿圏で冬にようかんを食べる習慣があり、福井県内でも広まっていったと考えられています。

冬水ようかんは、サイズ感にも歴史あり

『福井の冬水ようかん』の一般的な大きさはA4サイズ程度の平箱に、切れ目の入った水ようかんが入っています。
切れ目に沿ってすくい、ヘラにのせて食べるのが馴染みのスタイル。遡ること1950年代、駄菓子屋さんなどでは、漆の木箱に流して1枚いくら、1列いくらというスタイルで売っていたそうです。
1列5円程度ということもあり、庶民の間では日常的に食べる駄菓子という存在に。

1960年代から時代の流れもあり、生産しやすい紙製に変更、1970年代からA4サイズ仕様の紙箱になったと言われています。現在はプラスチック容器に入れたり、核家族化も進み食べきりサイズでコンパクトに売られていたりします。

お店によっては味のバリエーションもあったり、パッケージデザインにこだわったりしているので、お取り寄せして冬水ようかんの食べ比べも楽しめると思います。

ふくいの食文化を支える、冬水ようかん

近年では、福井の銘菓として見直されている『福井の冬水ようかん』。
材料に小豆のこしあん、寒天、黒糖とザラメを使うのが昔ながら。寒天のつるんとしたやわらかい食感、コクのある黒糖の風味が広がります。
福井県ではもともと職人が多い産業の町でもあり、厳しい冬の寒さで働き終えた後に食べることも多い冬水ようかん。体全体にやさしい甘みが広がり、疲れを緩和させてくれる伝統の和菓子なのです。

製造元の多くが11月〜3月までの生産が多く、年末に製造のピークを迎えます。まさにふくいの人々にとっては“こたつで水ようかん”が定番、冬の風物時でもあります。